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福岡県朝倉郡筑前町高田の地に佇む筑前町立大刀洗平和記念館は、かつて「東洋一」と謳われた大刀洗飛行場の歴史を今に伝える場所である。1919年(大正8年)に完成したこの飛行場は、旧日本陸軍の航空拠点として、地域の発展とともに多くの人々の生活に深く関わってきた。しかし、1945年(昭和20年)3月の米軍による大空襲により、飛行場は壊滅的な被害を受け、多くの尊い命が失われた。
記念館の外観は、かつての飛行場の格納庫を模したデザインで、訪れる者に当時の面影を偲ばせる。館内に足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのは、世界に唯一現存する九七式戦闘機と零式艦上戦闘機三二型の実機である。これらの機体は、戦争の記憶を色濃く残し、訪れる人々に平和の尊さを訴えかけている。
展示室には、当時の航空技術の発展や、飛行場と地域住民の生活の様子を伝える貴重な資料が約2,000点展示されている。戦時中、特攻隊の中継基地として多くの若者がこの地から飛び立った歴史も紹介されており、彼らの遺書や手紙からは、家族や故郷への深い愛情と、平和への願いが伝わってくる。
また、館内のシアターでは、戦争体験者の証言や当時の映像が上映され、戦争の悲惨さと平和の大切さを改めて考えさせられる。さらに、2022年7月からは、映画『ゴジラ-1.0』の撮影用に製作された海軍局地戦闘機・震電の実物大模型が新たに展示され、当時の航空技術の粋を感じることができる。
記念館の中央には、空襲で犠牲となった方々の遺影が展示されており、訪れる人々は静かに手を合わせ、平和への祈りを捧げる。毎年3月27日には「ピース・キャンドル」が行われ、全国から集まった人々が平和の大切さを訴え続けている。
筑前町立大刀洗平和記念館は、戦争の記憶を風化させることなく、次世代へと伝える役割を果たしている。訪れる者は、展示物や映像を通じて、戦争の悲惨さと平和の尊さを深く心に刻み、未来への希望を抱くことができる。