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鎌倉の静寂な住宅街を抜け、緩やかな坂道を上ると、緑豊かな木々に囲まれた龍口明神社が姿を現します。この地は、欽明天皇13年(552年)に創建されたと伝えられ、鎌倉最古の神社として知られています。境内に足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのは、五つの頭を持つ龍の迫力ある銅像です。この五頭龍大神は、かつて深沢の湖に棲み、村人たちを苦しめていたと伝えられていますが、江の島に降臨した弁財天の美しさに心を打たれ、改心して人々を守る神となったとされています。
境内には、樹齢数百年とされる御神木のタブノキがそびえ立ち、その根元に立つと、まるで大地の鼓動を感じるかのような静寂と力強さが伝わってきます。この木は、古くから生命力の象徴とされ、多くの参拝者が手を触れ、祈りを捧げてきました。
本殿へと続く参道は、四季折々の花々が彩りを添え、春には桜が舞い、秋には紅葉が境内を染め上げます。鳥居をくぐるたびに、心が清められるような感覚に包まれます。本殿の奥には、玉依姫命が祀られており、縁結びや子授け、安産の神として信仰を集めています。
毎年10月には例大祭が執り行われ、大神輿の渡御が行われます。この祭りは、地域の人々にとって一年で最も重要な行事の一つであり、五頭龍大神と玉依姫命の御神徳を称える神事が執り行われます。また、60年に一度の還暦巳年大祭では、五頭龍大神の御神体が御神輿で江の島に渡り、江島弁財天と共にご開帳されるという特別な儀式が行われます。
龍口明神社は、江の島の江島神社と夫婦神社としても知られています。五頭龍大神と弁財天の伝説に基づき、両社を参拝することで、より強い縁結びのご利益が得られるとされています。そのため、カップルや夫婦で訪れる参拝者も多く、二社を巡ることで、愛と絆を深める旅となるでしょう。
この地を訪れると、古の伝説と現代が交差する不思議な感覚に包まれます。静寂の中に響く鳥のさえずり、木々のざわめき、そして遠くから聞こえる波の音が、心を穏やかにし、日常の喧騒を忘れさせてくれます。龍口明神社は、ただの観光地ではなく、心の奥深くに響く何かを感じさせてくれる、特別な場所なのです。