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富山湾のほとり、魚津市の静かな海岸線に佇む博物館は、時の流れを超えた神秘の扉を開く場所である。ここには、約2000年前の杉の原生林が、悠久の眠りから目覚めたかのように展示されている。
1930年、魚津港の建設工事中、砂浜の下から巨大な樹根が次々と姿を現した。それらは、かつてこの地に広がっていた杉の森の名残であり、片貝川の氾濫によって運ばれた土砂に埋もれ、長い年月を経て発見されたものである。この埋没林は、1955年に国の特別天然記念物に指定され、その保存と展示のために博物館が設立された。
博物館の水中展示館に足を踏み入れると、地下水を満たした巨大なプールの中に、うねるような樹根が静かに沈んでいる。水面に映るその姿は、まるで時の流れを映し出す鏡のようであり、訪れる者を太古の世界へと誘う。これらの樹根は、発掘された場所にそのまま保存されており、当時のままの姿を今に伝えている。
乾燥展示館では、土中から掘り出された樹根や幹が展示されており、触れることでその質感や重みを感じ取ることができる。中には、上下を逆さまに展示された樹根もあり、自然の造形美と力強さを間近で体感できる。
また、魚津市は「蜃気楼の見える街」としても知られており、博物館内のハイビジョンホールでは、300インチの大画面で蜃気楼の映像が上映されている。光と風が織りなす幻想的な景色は、訪れる者の心を魅了してやまない。
博物館の敷地内には、カフェ「KININAL」が併設されており、地元産の木材を使用した温かみのある空間で、フルーツをまるごと使ったスイーツやドリンクを楽しむことができる。木のぬくもりに包まれながら、太古の森と現代の風景を思い描くひとときは、訪れる者にとって特別な時間となるだろう。
魚津埋没林博物館は、過去と現在が交差する場所であり、自然の神秘と人々の営みが織りなす物語を静かに語りかけてくる。ここを訪れれば、時の流れを超えた感動と、自然への畏敬の念を新たにすることだろう。