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長崎県島原市の平成町1-1に位置する「がまだすドーム」は、雲仙普賢岳の噴火災害の記憶と教訓を後世に伝えるために建設された、日本初の体験型火山ミュージアムです。「がまだす」とは、島原地方の方言で「がんばる」という意味を持ち、復興への強い意志が込められています。
1990年11月17日、雲仙普賢岳は198年ぶりに噴火を開始しました。その後、1996年6月まで約6年間にわたり活動が続き、特に1991年6月3日に発生した大規模な火砕流は、43名の尊い命を奪い、179棟の建物を焼失させるなど、甚大な被害をもたらしました。この災害の教訓を風化させることなく伝えるため、被害によって生まれた新たな土地に「がまだすドーム」が建設されました。
館内に足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのは、火砕流によって焼き尽くされた風景を再現した展示です。焼け焦げた電柱や歪んだバス停、黒く炭化した自転車など、当時の惨状が生々しく伝わってきます。これらの展示物は、自然の猛威と人間の無力さを痛感させると同時に、災害への備えの重要性を訴えかけています。
次に進むと、「大噴火シアター」が待っています。ここでは、1991年6月3日の火砕流発生時の映像が4Kの高精細映像で再現され、まるでその場にいるかのような臨場感を体験できます。映像と音響が一体となり、火砕流の恐ろしさと、その瞬間に何が起こったのかをリアルに感じ取ることができます。
さらに、館内には「平成噴火ジオラママッピング」という展示もあります。ここでは、約5年間にわたる噴火活動の中で、火砕流や土石流がどのように広がり、被害をもたらしたのかをプロジェクションマッピングで視覚的に理解することができます。地形の変化や被害の範囲が一目でわかるこの展示は、災害の規模と影響を深く考えさせられます。
また、フランスの火山学者であるクラフト夫妻の軌跡を紹介するコーナーも設けられています。世界各地の火山を調査し、その活動を記録し続けた夫妻は、1991年の普賢岳噴火で命を落としました。彼らの情熱と献身的な研究活動は、火山学の発展に大きく貢献し、その精神は今も多くの人々に影響を与えています。
さらに、子どもたちが楽しみながら学べる「こどもジオパーク」も新設されました。トランポリンやボルダリングなどの遊具を通じて、地球の力や雲仙火山の魅力を体全体で感じることができます。雨の日でも楽しめるこの屋内スペースは、家族連れにも大変人気です。
「がまだすドーム」は、災害の記憶を風化させることなく、次世代に伝える使命を担っています。ここを訪れることで、自然の脅威と人間の resilience(回復力)を深く理解し、防災意識を高めるきっかけとなるでしょう。島原の地で、過去の教訓を胸に刻み、未来への備えを考える時間を持つことができる場所です。