About
高知県高岡郡梼原町の中心部に佇む「雲の上の図書館」は、まるで森の中に迷い込んだかのような錯覚を覚える場所です。建築家・隈研吾氏の手によるこの図書館は、地元産の杉や檜をふんだんに使用し、木の温もりと香りが訪れる人々を優しく包み込みます。
館内に足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのは、天井から無数に伸びる木材の梁。それらはまるで森の木々が空へと手を伸ばしているかのようで、自然と一体となった空間を創り出しています。床に敷かれた木材の感触を素足で感じながら、訪れる人々は心地よい静寂と安らぎに包まれます。
館内の本棚は、「いろはにほへと」の48のテーマに分類され、各棚にはそのテーマに関連した書籍が並びます。例えば、「い」の棚には梼原町の風土や風習に関する本が、「ろ」の棚には高知県や四国全体の歴史や文化に関する本が収められています。この独自の分類法は、訪れる人々に新たな発見と知的好奇心を刺激します。
さらに、各本棚には海洋堂が制作した精巧なジオラマが展示されており、書籍のテーマを視覚的に表現しています。これらのジオラマは、まるで物語の一場面を切り取ったかのようで、読書の合間に目を楽しませてくれます。
1階の「えほんコーナー」は、子どもたちが自由に絵本を手に取り、床に座って読書を楽しめるスペースです。床暖房が完備されており、冬でも暖かく過ごせます。また、授乳室やおむつ替えスペースも設けられており、子育て中の親子にとっても安心して利用できる環境が整っています。
2階には、科学や歴史、芸術などの専門書が並ぶ「リベラルアーツの森」と名付けられた4つの小部屋があります。各部屋には、そのテーマを象徴するジオラマが展示されており、視覚的にも楽しめる空間となっています。
また、館内にはカフェ「ほうきぐも」が併設されており、地元の食材を使った手作りのチーズケーキやクッキー、香り高いコーヒーを楽しむことができます。読書の合間に一息つきながら、窓から見える梼原の風景を眺める時間は、まさに至福のひとときです。
この図書館は、単なる書籍の収蔵庫ではなく、人々が集い、交流し、学び合う場として設計されています。館内では定期的に音楽イベントや映画会、ワークショップなどが開催され、地域の文化活動の拠点ともなっています。
梼原町は、坂本龍馬が脱藩の際に通った地としても知られ、歴史と自然が息づく場所です。「雲の上の図書館」は、そんな梼原の魅力を凝縮した空間であり、訪れる人々に新たな発見と感動を提供してくれます。
木の香りに包まれながら、心ゆくまで読書を楽しむ。そんな贅沢な時間を過ごすために、ぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか。