間々観音

日本唯一のお乳の寺

About

愛知県小牧市の静かな一角に、「お乳の寺」として名高い間々観音が佇んでいます。正式には龍音寺と称されるこの寺院は、1492年(明応元年)に創建され、当初は小牧山の中腹に位置していました。しかし、織田信長が小牧山城を築く際に現在の地へと移されました。

境内に足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのは、乳房を模した手水舎です。この手水舎では、乳首から清らかな水が流れ出し、参拝者の手と心を清めます。さらに、境内には乳房を象った線香立てや絵馬が並び、訪れる人々の目を引きます。これらの独特な造形物は、授乳や母乳に関する願いを持つ多くの女性たちの心の拠り所となっています。

本堂に祀られている十一面千手観世音菩薩は、弘法大師空海が自ら彫刻したと伝えられる秘仏です。この観音様は、授乳や安産、子育てにご利益があるとされ、多くの参拝者が訪れます。特に、母乳の出に悩む女性や、子供の健やかな成長を願う母親たちが、ここで祈りを捧げています。

間々観音には、母乳にまつわる伝説が伝えられています。昔、夫を亡くし、貧しさから母乳が出なくなった女性が、観音様にお米を供えて祈り続けたところ、乳房が張り、母乳が溢れ出たという話です。この奇跡により、彼女は子供を育て上げ、近隣の子供たちにも母乳を分け与えたとされています。この伝説は、観音様の慈悲深い力を物語っています。

また、間々観音は交通安全やペットの健康守護のご利益でも知られています。永正年間(1504年~1521年)には、病気の馬を健康にし、駄馬を駿馬に変える農夫がいたと伝えられています。彼は、馬を清めた後、観音様に一心に祈願することで、その奇跡を起こしていたとされています。このことから、現代でも交通安全やペットの健康を願う人々が訪れます。

境内には、乳房を模した絵馬が奉納されており、参拝者はそれぞれの願いを込めて絵馬に記します。これらの絵馬には、母乳の出を良くしたい、胸が大きくなりたいといった切実な願いが綴られています。また、乳房を象ったお守りも授与されており、訪れた記念として手に取る人も多いです。

間々観音は、女性の悩みに寄り添う寺院として、多くの人々に親しまれています。その独特な雰囲気と、伝統的な信仰が融合したこの場所は、訪れる人々に深い感銘を与えます。静寂の中に佇む間々観音で、心静かに祈りを捧げてみてはいかがでしょうか。