野崎島

長崎県小値賀町の無人島

About

長崎県北松浦郡小値賀町の東方、五島列島の一角に位置する野崎島は、かつて人々の営みが息づいていたが、今ではほぼ無人の静寂に包まれている。この島の中心部、緑豊かな丘の上に佇む旧野首教会は、1908年にわずか17世帯の信者たちが築き上げたレンガ造りの聖堂である。彼らは禁教の時代を耐え抜き、信仰の自由を手に入れた喜びをこの教会に託した。教会の設計は、五島列島出身の名工・鉄川与助によるもので、外観は洋風ながら、内部には日本の伝統的な技法が随所に見られる。例えば、曲線を美しく表現するために壁の骨組みに竹を用い、その上から土と漆喰で仕上げるなど、独特の工夫が凝らされている。 (ojikajima.jp)

教会からほど近い野首海岸は、約300メートルにわたる白砂の浜とコバルトブルーの海が広がり、訪れる者の心を奪う美しさを誇る。かつてこの地に暮らした人々は、急峻な斜面に石積みの段々畑を築き、厳しい自然環境の中で生活を営んでいた。その跡は今も残り、彼らの知恵と努力の結晶として、訪れる者に深い感銘を与える。 (ojikajima.jp)

島の北部、山深い森の中には、704年に創建されたと伝えられる沖ノ神嶋神社が鎮座している。その背後には、高さ24メートル、幅12メートルの巨大な鳥居型の岩「王位石(おえいし)」がそびえ立つ。この神秘的な巨石は、自然の産物か人の手によるものか、その成り立ちは今も謎に包まれており、古来より聖なる場所として崇められてきた。 (ojikajima.jp)

現在、野崎島はほぼ無人となり、自然がかつての人々の営みを静かに包み込んでいる。しかし、旧野首教会や段々畑の跡、沖ノ神嶋神社と王位石など、島の随所に残る歴史の痕跡は、訪れる者に深い感動と敬意を抱かせる。この島を歩けば、過去と現在が交錯する不思議な感覚に包まれ、時の流れの中で人々が紡いできた物語に思いを馳せずにはいられない。