船岡温泉

京都市北区の歴史ある公衆浴場

About

京都市北区、紫野南舟岡町の一角に、時の流れを超えて佇む船岡温泉がある。その玄関は、まるで神社のような唐破風造りで、訪れる者を厳かに迎え入れる。この温泉は、大正12年(1923年)に料理旅館「船岡楼」の付属浴場として創業し、戦後、公衆浴場として新たな歴史を刻み始めた。 (kyoto-irodoru.city.kyoto.lg.jp)

暖簾をくぐると、まず目に飛び込んでくるのは、漆塗りの格天井に施された鞍馬天狗と牛若丸の彫刻である。この彫刻は、鞍馬山での修行を象徴し、京都の歴史と伝説を今に伝えている。さらに、脱衣所をぐるりと囲む欄間には、葵祭や今宮神社の祭礼、さらには上海事変を題材とした透かし彫りが施されており、当時の世相や文化が生き生きと描かれている。 (growing-art.mainichi.co.jp)

浴室へと続く渡り廊下の壁面には、色鮮やかなマジョリカタイルがびっしりと貼られている。このタイルは、大正から昭和にかけて流行したもので、異国情緒あふれるデザインが特徴である。足元には池が広がり、悠々と泳ぐ鯉が訪れる者の目を楽しませてくれる。この池に架かる石橋は、かつて千本鞍馬口にあった菊水橋を移築したもので、歴史の重みを感じさせる。 (rurubu.jp)

浴室には、日本で初めて導入された電気風呂をはじめ、ジェットバス、檜風呂、露天風呂など、多彩な湯船が揃っている。特に露天風呂には、貴船石がふんだんに使われており、水をかけると七色に変化するという不思議な魅力を持つ。日替わりで男女の浴室が入れ替わるため、訪れるたびに新たな発見がある。 (leafkyoto.net)

船岡温泉は、2003年に国の登録有形文化財に指定され、その歴史的価値が認められている。しかし、ここは単なる文化財ではなく、今もなお地元の人々や観光客に愛され続ける現役の銭湯である。その魅力は、建物の美しさだけでなく、訪れる者を包み込む温かさと、時代を超えた癒しの空間にある。

京都の喧騒を離れ、船岡温泉の湯に浸かれば、大正ロマンの香り漂う空間で、心も体も解きほぐされるだろう。ここは、過去と現在が交差する、まさに時の流れを感じる場所である。

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