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京都市南区の一角、九条通と千本通が交差する地点に、かつて平安京の壮麗な正門、羅城門がそびえていた。今、その場所には静かな児童公園が広がり、明治28年(1895年)に建立された「羅城門遺址」の石碑がひっそりと佇んでいる。
平安京の中央を南北に貫く朱雀大路の南端に位置した羅城門は、正面約35メートル、奥行き約9メートル、高さ約21メートルの二重楼閣で、朱塗りの木部と白土塗りの壁、そして金色に輝く鴟尾を頂いた瓦屋根が特徴的だった。門の内外には五段の石段が設けられ、その外側には石橋が架けられていたという。 (kyototuu.jp)
しかし、816年(弘仁7年)の大風で倒壊し、その後再建されたものの、980年(天元3年)の暴風雨で再び倒壊。以降、再建されることはなく、荒廃の一途をたどった。やがて、門の周辺は盗賊や妖怪の棲み処となり、数々の奇談が生まれた。例えば、源頼光の四天王の一人、渡辺綱が羅城門で鬼の腕を切り落としたという伝説や、芥川龍之介の小説『羅生門』の舞台としても知られている。 (leafkyoto.net)
現在、羅城門の遺構は残っていないが、東寺に安置されている兜跋毘沙門天像は、かつて羅城門の楼上に祀られていたものと伝えられている。また、京都駅北口広場には、羅城門の10分の1スケールの模型が展示されており、往時の姿を偲ぶことができる。 (kyototuu.jp)
かつての都の表玄関であり、数々の伝説と歴史を刻んだ羅城門。その跡地に立つ石碑は、時の流れとともに移り変わる京都の姿を静かに見守り続けている。