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松本市の中心部、女鳥羽川の北岸に沿って伸びる細長い通りがある。その名も「縄手通り」。江戸時代、この地は松本城の総堀と女鳥羽川に挟まれた土手であり、まるで一本の縄のように真っ直ぐに延びていたことから、その名が付けられた。
明治時代に入り、南総掘が埋め立てられ、四柱神社が建立されると、この通りは参道として賑わいを見せるようになった。大正時代からは車両の通行が禁止され、現在も365日歩行者天国として、多くの人々が行き交う場所となっている。
通りを歩けば、昔ながらの金物屋や骨董品店、駄菓子屋など、懐かしさを感じさせる店々が軒を連ねている。近年では、おしゃれな雑貨店やカフェも増え、国内外の若い観光客で賑わいを見せている。
この通りのシンボルは「カエル」。かつて女鳥羽川には清流にしか生息しないカジカガエルが多く棲息し、その美しい鳴き声が響いていたという。しかし、時代とともに川は汚れ、カジカガエルの姿は消えてしまった。それを惜しんだ地域の人々が1972年に「カエル大明神」を祀り、川と通りを昔ながらの美しい姿に戻そうと取り組みを始めた。以来、縄手通りは「カエルの街」として知られるようになり、毎年6月には「松本かえるまつり」が開催され、多くの人々が訪れる。
通りの一角には、四柱神社が鎮座している。天之御中主神、高皇産霊神、神皇産霊神、天照大神の四柱の神々を主祭神として祀ることから、その名がある。「願いごとむすびの神」として信仰を集め、あらゆる願いが叶うとされている。
縄手通りを歩けば、そこかしこにカエルの石像やオブジェが目に入る。通りの東西の入り口には、東京芸術大学の学生たちから寄贈されたカエルの石像が立ち、訪れる人々を迎えている。また、通りの中程には「カエル大明神」が祀られ、パワースポットとして多くの参拝者が訪れる。
この通りは、松本城から徒歩5分、松本駅から徒歩10分とアクセスも良好で、観光客にとっても魅力的なスポットとなっている。歩行者天国のため、小さな子供やペット、車椅子の人々も安心して散策でき、のんびりとした雰囲気が漂っている。
縄手通りは、歴史と現代が融合した魅力的な場所であり、訪れる人々に懐かしさと新しさを同時に感じさせてくれる。カエルの街としてのユニークな文化や、四柱神社の神聖な雰囲気、そして多彩な店舗が織りなす賑わいが、この通りを特別なものにしている。