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芦ノ湖のほとり、静寂と歴史が交差する場所に、かつての箱根関所が佇んでいます。江戸時代、旅人たちがこの地を通り、厳しい改めを受けたその関所は、今もなお往時の姿を留めています。黒々とした渋墨塗りの門をくぐれば、まるで時空を超え、江戸の世へと誘われるかのようです。
関所内には、大番所や上番休息所、足軽番所、獄屋、遠見番所などが再現されており、当時の役人たちの生活や職務の様子が伺えます。特に、遠見番所からの眺望は素晴らしく、芦ノ湖越しに富士山を望むことができます。この景色は、かつての役人たちが見張りをしながら目にしていたものでしょう。
関所の復元には、江戸時代末期の詳細な史料を基に、当時の匠の技や道具を用いて行われました。そのため、建物の構造や配置、使用されている材料に至るまで、忠実に再現されています。これにより、訪れる人々は江戸時代の雰囲気を肌で感じることができるのです。
また、関所内では、当時の通行手形や武具、関所破りに関する資料などが展示されており、江戸時代の交通や治安維持の仕組みを学ぶことができます。特に、関所破りは重罪とされ、捕まれば死罪に処されることもありました。しかし、江戸時代を通じて関所破りで捕まったのはわずか6人であったと伝えられています。
関所を訪れた後は、近隣の旧東海道杉並木を散策するのもおすすめです。約400本の杉が連なるこの並木道は、江戸時代に旅人たちが行き交った道であり、当時の面影を色濃く残しています。また、元箱根石仏群や箱根神社など、歴史と自然が融合したスポットも点在しており、箱根の魅力を存分に味わうことができます。
箱根関所は、ただの観光地ではなく、江戸時代の歴史や文化を肌で感じることができる貴重な場所です。芦ノ湖の静かな水面に映る関所の姿は、時代を超えて私たちに多くの物語を語りかけてくれるでしょう。