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長野県茅野市の静かな田園風景の中、青空に浮かぶ不思議な茶室が目を引く。それは建築家・藤森照信氏が手がけた「空飛ぶ泥舟」だ。地上約3.5メートルの高さに、4本のワイヤーで吊り下げられたこの茶室は、まるで空中に漂う船のように見える。
この茶室は、2010年に茅野市美術館で開催された藤森氏の企画展の一環として、ワークショップ参加者と地元職人の手によって制作された。翌年、藤森氏の生家近くの畑に移設され、現在の場所に落ち着いた。土壁と銅板葺きの屋根、そして丸みを帯びたフォルムが特徴的で、サイズは長さ2.7メートル、幅1.8メートル、高さ2メートル、重さ600キログラムにも及ぶ。 (asahi-mullion.com)
藤森氏は、自然素材を活かした独創的な建築で知られ、茅野市内には他にも「高過庵」や「低過庵」といったユニークな茶室が点在している。「高過庵」は地上6メートルの高さに建てられ、アメリカの『TIME』誌で「世界でもっとも危険な建物トップ10」に選ばれたこともある。 (city.chino.lg.jp)
「空飛ぶ泥舟」は個人所有のため、通常は内部に入ることはできないが、特別なツアーやイベント時には内部見学が可能となることもある。その際には、はしごを使って茶室に登り、非日常的な空間でのひとときを楽しむことができる。 (prtimes.jp)
この茶室は、まるでジブリアニメに登場する飛行船のような幻想的な佇まいで、訪れる人々の想像力をかき立てる。周囲の田園風景と調和しながらも、異世界への扉を開くかのような存在感を放っている。
茅野市を訪れた際には、ぜひこの「空飛ぶ泥舟」を目にし、藤森照信氏の建築世界に触れてみてほしい。その独創的なデザインと、空に浮かぶ茶室という非日常的な体験が、心に深く刻まれることだろう。