About
石狩川が幌内山地を穿ち、蛇行しながら流れるその一帯、神居古潭。川幅が最も狭まる場所では、わずか二十メートルほどとなり、両岸の岩盤が迫り、急流が轟音を立てて流れ下る。川床と両岸は、先白亜紀の神居古潭変成岩類から成り、悠久の時を経て形成された地形が、自然の厳しさと美しさを同時に物語っている。
この地は、古くから舟航の大難所として知られ、アイヌの人々はここで荷物を背負い、左岸または右岸を歩いて渡ったという。寛政十年頃の『蝦夷地絵図』や文化四年の『仕末上申書』には、カモイコタンの大難所を舟で下航中に丸木船が転覆し、御朱印まで水で濡らしたとの記録が残されている。
川の中には「テシ」と呼ばれる大岩があり、その両側は高さ約二メートルの滝となっている。下流の左岸には甌穴群が点在し、自然の造形美が随所に見られる。また、急流部を流れ下った川は、神居大橋下付近から下流にかけて広く深い淵となり、その水深は十八メートル余りにも達する。
この地の名「神居古潭」は、アイヌ語で「神の住む場所」を意味し、古くから神聖視されてきた。アイヌの人々は、自然のあらゆるものに魂が宿ると信じ、森や山、川を神聖な存在として崇めていた。この地形や急流は、彼らにとって特別な意味を持ち、神々が宿る場所として畏敬の念を抱いていたのであろう。
春には新緑が芽吹き、夏には深い緑が川面に映り、秋には紅葉が彩りを添える。冬には雪が静寂をもたらし、四季折々の表情を見せる神居古潭。その自然の美しさと厳しさは、訪れる者の心を打ち、古の人々が抱いた畏敬の念を今に伝えている。