真脇遺跡

石川県能登町の国指定史跡

About

能登半島の東岸、富山湾を望む静かな入り江に、真脇遺跡はひっそりと佇んでいます。ここは、約6,000年前の縄文時代前期から2,300年前の晩期まで、実に4,000年もの間、人々が暮らし続けた稀有な地です。三方を緑豊かな丘陵に囲まれ、前方には穏やかな海が広がるこの地形は、自然と人間が共生する理想的な環境を提供してきました。

遺跡からは、数百頭分にも及ぶイルカの骨が発見されています。これは、縄文人が海と深い関わりを持ち、イルカ漁を生業としていた証左です。当時の人々は、海岸近くまでやってくるイルカを巧みに捕獲し、その肉を食し、骨や油を生活の中で活用していたのでしょう。この伝統は、昭和初期まで続いたイルカの追い込み漁にも通じ、真脇の地に息づく海洋文化の深さを物語っています。

また、遺跡からは巨大な木柱を円形に配置した「環状木柱列」が出土しています。直径50~100センチメートルのクリの木を半分に割り、円形に並べたこの構造物は、祭祀や儀礼の場であったと推測されています。その中心に立つと、四方から自然のエネルギーが集まるかのような感覚に包まれ、縄文人の精神世界を垣間見ることができます。

さらに、土器や石器、木製品、編み物など、多種多様な遺物が良好な状態で発掘されています。特に、土器に施された精緻な装飾や、彫刻が施された柱などは、縄文人の高度な芸術性と精神性を示しています。これらの遺物は、真脇遺跡縄文館で展示され、訪れる人々に古代の息吹を伝えています。

真脇遺跡は、単なる考古学的な遺産にとどまらず、自然と共生し、豊かな文化を築いた縄文人の知恵と感性を現代に伝える貴重な場所です。ここを訪れることで、私たちは遥か昔の人々の暮らしや思いに触れ、自然との調和の大切さを改めて感じることができるでしょう。