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白谷雲水峡は、屋久島の北部、白谷川の上流に広がる神秘的な渓谷です。この地は、年間を通じて豊富な雨量に恵まれ、森全体が深い緑の苔で覆われています。その幻想的な風景は、まるで別世界に迷い込んだかのような錯覚を覚えさせます。
渓谷の入り口を進むと、まず目に飛び込んでくるのが「飛流おとし」という滝です。花崗岩の間を勢いよく流れ落ちる清流は、白い飛沫を上げながら岩肌を滑り降り、その音は森の静寂を破るかのように響き渡ります。この滝は、雨による浸食で形成されたもので、自然の力強さと美しさを同時に感じさせてくれます。
さらに奥へと足を進めると、「くぐり杉」と呼ばれる巨大な屋久杉が現れます。樹高22メートル、胸高周囲3.1メートルのこの杉は、根元に大きな空洞があり、その名の通り人がくぐり抜けることができます。この杉をくぐることで、まるで森の守護者に迎え入れられたような感覚を覚えます。
さらに進むと、「七本杉」と名付けられた大杉が立っています。太い幹が天に向かってまっすぐに伸び、上部で大きく枝分かれしています。その堂々たる姿は、長い年月を経てこの地に根を下ろし続けてきた生命の力強さを物語っています。
そして、白谷雲水峡の中でも特に有名なのが「苔むす森」です。一面が緑色の苔で覆われ、木々や岩、地面までもが柔らかな緑の絨毯に包まれています。この神秘的な風景は、スタジオジブリの映画『もののけ姫』の舞台のモデルとなったとも言われています。森の中を歩いていると、まるで映画の世界に入り込んだかのような感覚に陥ります。
白谷雲水峡は、江戸時代から景勝地として知られ、当時は「楠川歩道」として整備されていました。花崗岩を敷き詰めたこの歩道は、当時の人々の技術の高さを感じさせます。また、江戸時代には杉の伐採が行われていたため、渓谷内にはその名残が見られます。しかし、現在では自然が再生し、豊かな森が広がっています。
白谷雲水峡は、屋久島の豊かな自然と歴史が詰まった美しい渓谷です。訪れる人々は、渓谷の美しい景色や巨岩、原生林の中を歩きながら、屋久島の自然を満喫することができます。散策路は整備されているため、初心者から経験者まで楽しむことができるコースがいくつか用意されています。特に、太鼓岩へのコースは、頂上からの絶景が魅力で、多くのハイカーに人気があります。
白谷雲水峡は、まさに自然の神秘と歴史が交差する場所です。訪れるたびに新たな発見があり、何度でも足を運びたくなる魅力に溢れています。この地を歩けば、日常の喧騒を忘れ、心が洗われるような感覚を味わうことができるでしょう。