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目黒川のほとり、都会の喧騒から一歩離れた静寂の中に、田道広場公園はひっそりと佇んでいます。この小さな公園は、目黒通りの賑わいを背に、訪れる人々に穏やかな時間を提供しています。
公園の面積はわずか約150平方メートルと控えめですが、その魅力は計り知れません。目黒川沿いに位置するため、春には桜の花が川面を彩り、訪れる人々の目を楽しませます。桜の季節には、目黒川沿いの桜並木が見事な景観を作り出し、多くの花見客で賑わいます。しかし、田道広場公園はその小ささゆえに、喧騒から逃れ、静かに桜を愛でることができる隠れた名所となっています。
公園内にはベンチや遊具は設置されていませんが、その分、訪れる人々は思い思いの時間を過ごすことができます。目黒川を眺めながら読書をする人、静かに瞑想にふける人、友人と語らう人々。それぞれがこの場所で、自分だけの時間を紡いでいます。
田道広場公園の近くには、目黒区民センターや田道小学校があり、地域の人々にとって身近な存在です。また、目黒川に架かるふれあい橋を渡れば、公園へとたどり着くことができます。この橋は、都立芸術高校の生徒たちによる壁画が描かれており、アートと自然が融合した空間を演出しています。
田道という地名は全国的にも珍しく、その由来には諸説あります。一説には、平将門の時代に目黒氏の一族である田道源吾という武士がいたことから名付けられたとも、田んぼの道「田道」を音読したものとも言われています。この地名が示すように、かつてこの地域は田園風景が広がる静かな場所であったことが伺えます。
公園の周辺には、目黒の歴史を感じさせるスポットも点在しています。例えば、田道庚申塔群は、延宝5年(1677年)から正徳3年(1713年)までの庚申塔6基と、延宝元年(1673年)の地蔵1基が一か所にまとまって残る珍しいものです。これらの庚申塔は、江戸時代から続く庚申講が現在も続いており、地域の人々によって大切に守られています。
また、目黒川沿いには、江戸時代に将軍が鷹狩りに訪れた際に立ち寄ったとされる「爺が茶屋」があった茶屋坂もあります。この坂は勾配が20%と急で、歩くには少しつらいものの、目黒の歴史を象徴する場所として知られています。
田道広場公園は、その小さな空間の中に、目黒の歴史と自然、そして人々の営みが詰まった場所です。都会の喧騒を忘れ、静かに自分と向き合う時間を持ちたいとき、この公園は最適な場所となるでしょう。