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霧島連山の麓、鹿児島県霧島市の狭名田地区に足を踏み入れると、そこには日本の神話と歴史が息づく風景が広がっています。この地は、天孫降臨の神話で知られる瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)が初めて稲作を行ったと伝えられ、日本最古の水田と称される「狭名田の長田」が存在します。 (city-kirishima.jp)
春の訪れとともに、田んぼには水が張られ、鏡のように空を映し出します。風がそよぐと、水面はさざ波を立て、まるで神々が舞い降りたかのような神秘的な輝きを放ちます。周囲には霧島山系の緑豊かな山々が連なり、四季折々の表情を見せる自然の美しさが心を打ちます。
この地には、瓊瓊杵尊が木花開耶姫命(コノハナサクヤヒメ)との間に彦火火出見尊(ヒコホホデミノミコト)をもうけた際、狭名田と名付けたという伝承が残っています。また、母乳が足りなかったため、甘酒を作って育てたとも伝えられています。 (city-kirishima.jp)
時を経て、島津斉彬の時代にはこの地に田の神が祀られ、大正4年には村人たちによって「狭名田の跡」という石碑が建てられました。昭和4年には霧島神宮の神田として保存されることとなり、平成8年には再び神宮の神田としての役割を担うこととなりました。 (city-kirishima.jp)
狭名田の長田周辺を歩くと、田んぼの畦道には季節の花々が咲き誇り、鳥たちのさえずりが響き渡ります。農作業に勤しむ人々の姿は、古代から続く稲作文化の継承者としての誇りを感じさせます。この地の空気を吸い込むと、神話と歴史、そして自然が織りなす調和の美しさに心が洗われるようです。
狭名田の長田は、単なる農地ではなく、日本の原風景と精神文化を象徴する場所です。ここを訪れることで、私たちは日本のルーツに触れ、先人たちの営みと自然への感謝の心を再認識することができるでしょう。