About
熱海の海を見下ろす八幡山の頂に、ひっそりと佇む一つの館がある。その名は「熱海秘宝館」。1980年の開館以来、ここは大人たちの秘密の遊園地として、多くの人々を魅了してきた。
館内に足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのは、江戸時代の吉原を再現した「吉原珍景」。レバーを回すと、花魁が艶やかに動き出す仕掛けが施されている。その隣には、マリリン・モンローの象徴的なスカートが風で舞い上がるシーンを再現した展示があり、ハンドルを回すとその瞬間が目の前で蘇る。
2024年5月、秘宝館は大規模なリニューアルを遂げた。新設された「ネオ秘宝館」エリアでは、現代の視点から性と愛を探求する展示が展開されている。「創造力」のエリアでは、官能小説を自ら創作できるコーナーや、内藤ルネ氏が手がけた『薔薇族』の表紙絵が展示されている。「想像力」のエリアには、各国の大人のおもちゃや、TENGAのコーナーが設けられ、訪れる者の好奇心を刺激する。そして「表現力」のエリアでは、コンドーム着用啓発のフォトスポットや、ランジェリーをテーマにしたアート作品が並び、写真撮影も可能となっている。 (atami-ropeway.jp)
館内を進むと、熱海の伝統的な祭りや風習をモチーフにした展示も目を引く。例えば、稲取温泉の「どんつく祭り」を彷彿とさせる巨大な男根のオブジェや、熱海の名所「愛錠岬」にちなんだ愛の絵馬が飾られている。これらは、地域の文化と性の歴史が交差する場所としての秘宝館の役割を物語っている。
館内の展示は、昭和のレトロな雰囲気を色濃く残しつつも、最新のテクノロジーを取り入れたインタラクティブな仕掛けが随所に施されている。例えば、バーチャルリアリティを活用した体験型の展示や、音声付きの春画など、訪れる者を飽きさせない工夫が凝らされている。
熱海秘宝館は、単なるエンターテイメント施設にとどまらず、性と愛の文化を真面目に、そしてユーモアを交えて探求する場として存在している。ここを訪れることで、私たちは自身の内面と向き合い、新たな視点を得ることができるだろう。