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広島県三次市の静かな町並みに佇む、湯本豪一記念日本妖怪博物館。ここは、江戸時代の物語『稲生物怪録』の舞台となった地であり、妖怪たちの息吹が今も感じられる場所です。
博物館の扉を開けると、薄暗い空間が広がり、まるで異世界への入口のよう。展示室には、妖怪研究家・民俗学者である湯本豪一氏が長年にわたり収集した約5,000点のコレクションが並びます。江戸時代の絵巻や錦絵、焼き物、着物など、多岐にわたる資料が、妖怪たちの多彩な姿を現代に伝えています。
特に目を引くのは、百鬼夜行絵巻。闇夜に妖怪たちが列をなして進む様子が生き生きと描かれ、見る者を不思議な世界へと誘います。また、源頼光公館土蜘作妖怪図では、源頼光と四天王が土蜘蛛と対峙する緊迫した場面が描かれ、当時の人々の妖怪への畏怖と興味が伝わってきます。
博物館内には、最新のデジタル技術を駆使した「チームラボ 妖怪遊園地」も常設されています。ここでは、自分で描いた妖怪がスクリーン上で動き出すインタラクティブな体験ができ、子どもから大人まで楽しめる空間となっています。
三次の町は、霧の街としても知られ、幻想的な風景が広がります。この地で生まれた『稲生物怪録』は、江戸時代後期に実在した広島藩士・稲生武太夫が少年時代に体験したとされる物語で、30日間にわたり様々な妖怪や怪異に耐え抜いたと伝えられています。この物語は、江戸時代のみならず、明治以降も講談や小説、戯曲、漫画、オペラなど多様な形で語り継がれ、今日まで人々の心を魅了し続けています。
博物館を訪れた後は、三次の町を散策してみてはいかがでしょうか。卯建のある商家が並ぶ町並みは、歴史と情緒を感じさせ、まるで時が止まったかのような風景が広がります。川に囲まれたこの町は、かつて舟運による物資の集散地として栄え、その名残が今も色濃く残っています。
湯本豪一記念日本妖怪博物館は、妖怪たちの世界を通じて、日本の文化や歴史、人々の心の奥深さを感じさせてくれる場所です。ここでしか味わえない不思議な体験が、あなたを待っています。