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新潟県十日町市の奥深く、清津峡の渓谷を貫くトンネルの最奥部に、訪れる者を異次元へと誘う空間が広がっている。そこは「パノラマステーション」と呼ばれ、自然とアートが見事に融合した場所である。
トンネルを進むにつれ、ひんやりとした空気が肌を撫で、足音が静寂の中に響く。やがて目の前に現れるのは、開口部から差し込む柔らかな光と、床一面に張られた浅い水鏡。その水面には、清津峡のV字谷と青空が上下逆さまに映り込み、現実と幻想の境界が曖昧になる。
このパノラマステーションは、2018年の「大地の芸術祭」において、中国の建築家マ・ヤンソン氏とMADアーキテクツによって創り出された作品「Tunnel of Light」の一部である。彼らは自然の「五大要素」(木、土、金属、火、水)を取り入れ、トンネル内部を芸術的な空間へと昇華させた。 (tokamachishikankou.jp)
水鏡の奥へと進むと、足元から伝わる冷たさが心地よく、視界には柱状節理の岩壁と清津川の流れが広がる。この地形は、マグマが冷えて固まる際に生じた独特の地質構造であり、国の名勝・天然記念物にも指定されている。 (tokamachishikankou.jp)
四季折々の表情を見せる清津峡。春には新緑が芽吹き、夏には深い緑が渓谷を覆う。秋には紅葉が岩肌を彩り、冬には雪景色が静寂をもたらす。その中で、パノラマステーションは常に訪れる者を迎え入れ、自然とアートの調和を体感させてくれる。
この場所に立つと、時間の流れが緩やかになり、日常の喧騒から解放される。清津峡の壮大な景観と、パノラマステーションの幻想的な空間が織りなす世界は、訪れる者の心に深く刻まれるだろう。