About
札幌の繁華街、すすきのの一角に、漁師町の情緒を色濃く残す居酒屋がある。その名も「海味はちきょう 本店」。店内に足を踏み入れると、壁一面に掲げられた大漁旗や、天井から吊るされた集魚灯が目に飛び込んでくる。まるで漁船の船内に迷い込んだかのような錯覚を覚える空間だ。
この店の名物は、何と言っても「元祖つっこ飯」。白米の上に、店員が「おいさー!」の掛け声とともに、イクラを惜しげもなく盛り付ける。その光景は、まるで宝石がこぼれ落ちるかのような美しさ。しかし、この豪快なパフォーマンスの裏には、漁師たちへの深い敬意が込められている。海の恵みを余すことなく味わい、感謝の気持ちを持って食すことが、この店の流儀なのだ。
「はちきょう」という店名は、かつて羅臼の荒波を乗り越えた漁船「第八協栄丸」に由来する。羅臼の海は、知床半島と国後島に挟まれた根室海峡に位置し、暖流と寒流が交差する豊かな漁場として知られる。しかし、その潮流は速く、漁師たちは常に危険と隣り合わせだった。そんな厳しい環境で漁を続けた「第八協栄丸」の精神を受け継ぎ、店は新鮮な海の幸を提供し続けている。
店内には、カウンター席、テーブル席、掘りごたつ席が並び、個室も用意されている。一人でしっぽりと飲むもよし、仲間と賑やかに宴を楽しむもよし。どの席からも、スタッフの威勢の良い掛け声や、客たちの笑い声が響き渡り、活気に満ちた雰囲気が漂う。
メニューには、羅臼産の真ホッケの開きや、きんきの湯煮、特大サーモンハラスの浜干しなど、北海道各地から厳選された旬の食材が並ぶ。どの料理も、素材の味を最大限に引き出す調理法で提供され、訪れる者の舌を唸らせる。
「海味はちきょう 本店」は、ただの居酒屋ではない。そこには、海と共に生きる人々の魂が息づいている。札幌の夜、ここでしか味わえない海の恵みと、漁師たちの心意気を感じてみてはいかがだろうか。