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東京の喧騒から一歩足を踏み入れると、墨田区立隅田公園の奥深くに、ひょうたん池が静かに佇んでいる。その名の通り、瓢箪の形をしたこの池は、四季折々の風情を映し出し、訪れる人々に安らぎを与えている。
春、桜の花びらが風に舞い、池の水面に淡いピンクの絨毯を敷き詰める。江戸時代から続く墨堤の桜は、今もなお多くの人々を魅了し、花見の名所として賑わいを見せる。池のほとりでは、家族連れや友人同士が弁当を広げ、笑顔が溢れる光景が広がる。
夏の夕暮れ、隅田川の花火大会の余韻が残る中、ひょうたん池は静寂を取り戻す。水面には花火の残像が揺らめき、夜風が心地よく頬を撫でる。池の周囲を散策する人々は、都会の喧騒を忘れ、静かな時間を楽しんでいる。
秋になると、紅葉が池の水面に映り込み、まるで絵画のような美しさを見せる。落ち葉が水面に浮かび、風が吹くたびにさざ波が立つ。この季節、池の周囲を歩くと、足元にカサカサと落ち葉の音が響き、秋の訪れを感じさせる。
冬の朝、池の水面には薄氷が張り、白い息を吐きながら散歩する人々の姿が見られる。静寂の中、遠くから聞こえる鳥のさえずりが、冬の冷たい空気を和らげる。池のほとりに立つと、都会の喧騒が嘘のように感じられる。
このひょうたん池は、1977年から1978年にかけての大改修で現在の姿となった。それ以来、地域の人々に親しまれ、憩いの場として愛されている。2022年9月には、初めての「かいぼり」が実施され、池の水を抜き、生物の救出が行われた。この作業には、区内の小中学生や保護者、すみだ自然環境サポーター、すみだ水族館のスタッフなど約40人が参加し、池の環境保全と生態系の維持に努めた。 (city.sumida.lg.jp)
かいぼりの際には、体長約50~80センチのコイやドジョウ、ヌマエビ、ヤゴ、アメリカザリガニ、カメなど約300匹の生物が確認された。これらの生物は、池の生態系の一部として大切に保護され、池の環境改善に役立てられた。 (asahi.com)
ひょうたん池の周囲には、江戸時代から続く文化や歴史が息づいている。隅田公園内には、芭蕉の句碑や長命寺、牛嶋神社など、多くの名所旧跡が点在し、訪れる人々に歴史の深さを感じさせる。また、隅田川沿いの風景は、江戸時代から庶民の行楽地として親しまれ、多くの浮世絵や文学作品の題材となってきた。
ひょうたん池は、都会の喧騒を忘れさせてくれる静寂のオアシスであり、四季折々の風情を楽しむことができる。訪れるたびに新たな発見があり、心を豊かにしてくれる場所である。