最上山専称寺

山形市内で最大規模の寺院で、最上義光の娘・駒姫の菩提寺

About

山形市緑町の一角、静寂に包まれた専称寺の境内に足を踏み入れると、時の流れがゆるやかに感じられる。この寺は、戦国時代の名将・最上義光が、愛娘・駒姫の菩提を弔うために建立したと伝えられる。駒姫は、その美しさで知られ、わずか十五歳で非業の死を遂げた悲劇の姫君である。

境内にそびえる本堂は、元禄十六年(1703年)に再建されたもので、東北地方最大級の木造建築としてその威容を誇る。屋根の四隅には、名工・左甚五郎作と伝えられる力士像が鎮座し、夜な夜な泣き声を上げたという伝説が残る。住職が鉄砲で鎮めたという逸話もあり、歴史の息吹を感じさせる。

本堂の前庭には、樹齢四百年とも言われる枝垂れ桜が立つ。義光公が参拝の際、この桜に馬を繋いだことから「駒つなぎの桜」と呼ばれ、春には美しい花を咲かせ、訪れる人々の目を楽しませている。

境内の奥には、駒姫の墓碑がひっそりと佇む。彼女が詠んだ辞世の句「罪をきる弥陀の剣にかかる身の なにか五つのさわりあるべき」が刻まれ、訪れる者の胸を打つ。父・義光の深い悲しみと、娘への愛情が今もこの地に息づいている。

また、境内には「雪降り銀杏」と呼ばれる大イチョウがそびえ立つ。その葉が散ると根雪になるという言い伝えがあり、地域の人々にとって冬支度の目安とされてきた。秋には黄金色に輝き、訪れる者を魅了する。

専称寺は、歴史と自然が織りなす静寂の空間であり、訪れる人々に深い感慨を与える場所である。駒姫の悲劇と、父・義光の愛情が刻まれたこの地で、時の流れに思いを馳せてみてはいかがだろうか。