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大阪の新世界、通天閣の足元に佇む一軒の銭湯がある。昭和27年創業の「新世界ラジウム温泉」だ。(radium.co.jp)
暖簾をくぐると、まず目に飛び込んでくるのは、実物大のキリンの木彫り像。なぜここにキリンが?その答えは、設置当時、天王寺動物園にキリンが不在だったため、アフリカ・ケニアから一刀彫りのキリンを取り寄せたという逸話にある。(ameblo.jp)
番台で入浴料を支払い、脱衣所へと進む。そこには昭和の香りが色濃く残る空間が広がっている。木製のロッカー、磨き上げられた床、そして壁に掛けられたレトロなポスター。まるで時が止まったかのような懐かしさが漂う。
浴室に足を踏み入れると、まず目に入るのは、曲線を描く主浴槽。湯気が立ち上り、心地よい温もりが全身を包み込む。壁には美しいタイル絵が施され、湯船の縁には御影石が使われている。(navita.co.jp)
奥へ進むと、露天風呂への扉が現れる。扉を開けると、そこには日本庭園を思わせる風情ある空間が広がっている。湯船に身を沈め、ふと顔を上げると、目の前には通天閣がそびえ立つ。夜にはライトアップされた通天閣が、湯煙の向こうに幻想的な姿を見せる。(radium.co.jp)
この露天風呂には、鳥取県人形峠で採掘されたラジウム鉱石が沈められている。微量の放射線が放出され、血行促進や免疫力向上などの効果が期待されるという。(radium.co.jp)
さらに、関西でも数少ない高濃度人工炭酸泉が楽しめる。湯に浸かると、細かな気泡が全身を包み込み、まるでラムネの中にいるかのような感覚に陥る。血流が良くなり、疲労回復や美肌効果が期待できるとされている。(radium.co.jp)
湯上がりには、脱衣所で冷たい牛乳やラムネを手に取り、木製のベンチに腰掛ける。窓から差し込む夕陽が、床に長い影を落とす。外からは新世界の賑やかな喧騒が微かに聞こえてくるが、ここだけは別世界のような静寂が広がっている。
新世界ラジウム温泉は、ただの銭湯ではない。昭和の面影を色濃く残しつつ、現代の技術を取り入れた、心と体を癒すオアシスだ。大阪の喧騒の中で、ふと立ち寄りたくなる、そんな場所である。