常滑市やきもの散歩道

日本六古窯の一つ、常滑焼の発祥地

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常滑の丘陵地に足を踏み入れると、時の流れがゆるやかに巻き戻されるかのような感覚に包まれる。ここは、焼き物の町として名高い常滑市の中心部に位置する「やきもの散歩道」。迷路のように入り組んだ小径を進むと、赤茶色のレンガ造りの煙突が空に向かってそびえ立ち、かつての窯業の繁栄を物語っている。

道の両脇には、明治期の土管や昭和初期の焼酎瓶が壁面に埋め込まれた坂道が続く。これらの廃材は、職人たちの手によって新たな景観として生まれ変わり、訪れる者の目を楽しませている。足元には、焼成時に使用された捨て輪が敷き詰められ、滑り止めとしての役割を果たしながら、独特の風情を醸し出している。

散策を進めると、かつて廻船問屋として栄えた瀧田家が現れる。江戸から明治にかけて、常滑で生産された陶器を全国へと運ぶ拠点であったこの家屋は、今もなおその威厳を保ち、訪れる者に往時の賑わいを伝えている。

さらに歩を進めると、1887年(明治20年)頃に築かれた登窯が姿を現す。10本の煙突と8つの焼成室を持つこの窯は、現存する中で国内最大級とされ、国の重要有形民俗文化財にも指定されている。かつては多くの職人たちがここで汗を流し、数々の名品を生み出してきた。

やきもの散歩道の途中には、地元の素材を活かしたパン屋や、常滑焼の器で提供されるカフェが点在し、訪れる者の五感を満たしてくれる。また、陶芸体験ができる工房もあり、自らの手で土に触れ、常滑焼の魅力を肌で感じることができる。

この地を歩けば、常滑焼の歴史と文化、そして職人たちの情熱が至る所に息づいていることを実感する。やきもの散歩道は、ただの観光地ではなく、時代を超えて受け継がれる伝統と、そこに生きる人々の物語が織りなす、心温まる場所である。