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津軽平野の広がる大地に、ひときわ優美な姿を見せる岩木山。その麓に佇む岩木山神社は、千二百年以上の歴史を誇り、津軽の人々から「お岩木さま」と親しまれてきた。
参道を進むと、杉木立に囲まれた静寂の中、楼門が現れる。この門は、江戸時代初期に建立され、極彩色の彫刻が施されており、その美しさから「奥日光」とも称される。門をくぐると、拝殿へと続く中門があり、こちらもまた華麗な装飾が目を引く。
境内には、上向きと下向きの二体の狛犬が鎮座している。上向きの狛犬は金運、下向きの狛犬は恋愛運を授けるとされ、参拝者はその前で手を合わせる。また、三つ首の龍を象った手水舎からは、岩木山の伏流水が勢いよく流れ出ており、この水は手を清めるだけでなく、飲むこともできるとされる。
岩木山神社には、顕國魂神、多都比姫神、宇賀能賣神、大山祇神、坂上刈田麿命の五柱が祀られている。これらの神々は、国造り、農業、商業、山の神、武勇の神として、津軽の発展を支えてきた。
旧暦八月一日には、「お山参詣」と呼ばれる伝統行事が行われる。村ごとに白装束をまとった人々が、囃子を奏でながら岩木山の山頂を目指すこの行事は、五穀豊穣と家内安全を祈願するもので、津軽の人々の信仰の深さを物語っている。
岩木山神社は、津軽の自然と歴史、文化が息づく場所であり、訪れる者に深い感動と安らぎを与えてくれる。その静寂の中で、古の人々の祈りと、今を生きる人々の願いが交差し、新たな物語が紡がれていく。