About
文京区小日向の静かな住宅街を歩くと、緑豊かな日輪寺の境内にたどり着く。ここには、江戸時代から咳の神として庶民の信仰を集めてきた「甘酒婆地蔵」が佇んでいる。
この石像は、和服をまとった老婆の姿をしており、一般的な地蔵尊とは一線を画す独特の風貌を持つ。その由来は、江戸時代に喘息に苦しんでいた一人の老婆に遡る。彼女は「死後、咳の神となって同じ病で苦しむ人々を救いたい」と願い、日輪寺の参道で甘酒を売り始めた。この甘酒が風邪に効くと評判になり、彼女の死後、人々はその功績を称えてこの像を建立したという。 (seisyuu1.com)
境内には、他にも「縛られ地蔵」と呼ばれる縄で縛られた石仏があり、これもまた庶民の信仰の深さを物語っている。林泉寺の境内にあるこの地蔵は、江戸時代の大岡政談にまつわる逸話が伝えられており、罪人の無実を証明するために地蔵を縛ったという話が残っている。 (blog.goo.ne.jp)
また、近隣の源覚寺には「こんにゃく閻魔」として知られる閻魔大王像が安置されている。この像は、眼病に苦しむ老婆が祈願したところ、閻魔大王が自身の片目を与えて彼女の病を治したという伝説があり、以来、眼病平癒の信仰を集めている。 (city.bunkyo.lg.jp)
これらの地蔵や閻魔像は、江戸時代から続く庶民の信仰と、病に苦しむ人々の願いが形となったものであり、現代においても多くの参拝者が訪れ、その歴史と文化を感じ取ることができる。