天龍寺

京都市右京区の世界遺産

About

京都の嵐山に佇む天龍寺は、四季折々の美しさを湛え、訪れる者の心を静かに揺さぶる場所です。春の訪れとともに、境内には約200本の桜が咲き誇り、しだれ桜やソメイヨシノ、八重桜が風に揺れる姿は、まるで絵巻物の一場面のようです。特に多宝殿前のしだれ桜は、その優雅な姿で多くの人々を魅了します。

天龍寺の歴史は、1339年(暦応2年)に足利尊氏が後醍醐天皇の菩提を弔うため、夢窓疎石を開山として創建されたことに始まります。しかし、度重なる火災や戦乱により、創建当初の伽藍は失われ、現在の建物の多くは明治以降に再建されたものです。それでもなお、天龍寺はその格式と美しさを保ち続けています。

境内に足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのが曹源池庭園です。夢窓疎石が作庭したこの池泉回遊式庭園は、嵐山や亀山を借景とし、池の中には「曹源一滴」と刻まれた石碑が見つかったことからその名が付けられました。池の水面に映る四季の移ろいは、訪れるたびに異なる表情を見せ、心を和ませてくれます。

法堂の天井には、加山又造画伯によって描かれた「雲龍図」があります。この龍は「八方睨み」と称され、どの角度から見ても目が合うように描かれています。天龍寺の名の由来ともなった龍の姿は、力強さと神秘性を兼ね備え、訪れる者に深い印象を与えます。

また、天龍寺の塔頭である慈済院には、夢窓疎石が彫刻したと伝わる弁財天が祀られています。この弁財天は「水摺大弁財天」と称され、毎年2月3日の節分会でのみご開帳されます。境内の来福門は竜宮造りの門として知られ、その独特の美しさが訪れる人々を魅了します。

天龍寺は、1994年に「古都京都の文化財」として世界遺産に登録されました。その歴史と文化、そして自然の美しさが融合したこの場所は、訪れるすべての人々に深い感動を与え、心の奥深くに刻まれることでしょう。