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天王山の頂に佇む山崎城跡は、歴史の風が今もそよぐ場所である。標高270.4メートルのこの山は、京都盆地と大阪平野を結ぶ要衝に位置し、古来より戦略的な地として数多の物語を紡いできた。
山道を登るにつれ、四季折々の自然が訪れる者を迎える。春には桜が咲き誇り、夏は深緑が生い茂る。秋には紅葉が山を彩り、冬は静寂の中に凛とした空気が漂う。その道中、宝積寺の境内に足を踏み入れると、秀吉が腰掛けたと伝わる「出世石」がひっそりと佇んでいる。この石に腰を下ろした秀吉は、天下統一への夢を描いたのだろうか。
さらに進むと、旗立松の展望台に辿り着く。ここは、山崎の戦いの際に秀吉が軍旗を掲げ、士気を高めたとされる場所である。眼下には、かつての戦場が広がり、歴史の舞台が今も息づいていることを感じさせる。
山頂に到達すると、山崎城の遺構が静かに時を刻んでいる。天守台の高まりや、ひな壇状に連なる郭、そして井戸の跡が、かつての城の姿を偲ばせる。秀吉が築いたこの城は、わずか2年でその役目を終えたが、その遺構は今もなお、訪れる者に歴史の重みを伝えている。
また、山中には幕末の禁門の変で自刃した十七烈士の墓がひっそりと佇んでいる。彼らの志と悲劇の物語が、この地に深い哀愁を漂わせている。
天王山の自然と歴史が織りなす風景は、訪れる者の心に深く刻まれる。山道を歩きながら、過去の物語に思いを馳せるひとときは、現代の喧騒を忘れさせてくれる。この地を訪れ、歴史の息吹と自然の美しさを感じてみてはいかがだろうか。