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嵯峨野の竹林を抜け、小倉山の麓に足を踏み入れると、そこには時代劇の名優、大河内傳次郎が生涯をかけて築き上げた庭園が広がっています。彼は1931年、34歳の時にこの地を手に入れ、亡くなるまでの30年間、映画出演料の大半を注ぎ込み、庭師・広瀬利兵衛と共にこの庭を創り上げました。 (oniwa.garden)
庭園の入口に立つ中門をくぐると、まず目に飛び込んでくるのは大乗閣です。この建物は寝殿造、書院造、数寄屋造など、日本の伝統的な建築様式を融合させた独特の意匠を持ち、数寄屋師・笛吹嘉一郎によって設計されました。 (kyotofukoh.jp)大乗閣の前には広々とした芝生が広がり、周囲にはモミジやサクラ、マツなどの高木が植えられています。ここからは、東に比叡山や東山三十六峰、振り返れば背後に嵐山がそびえ立ち、東西の山並みを同時に眺めることができます。 (kyoto-ga.jp)
園路を進むと、白砂が敷かれ、低いマツが植えられた枯山水の空間に出ます。その中心には、傳次郎が座禅を組んだ持仏堂が静かに佇んでいます。さらに進むと、一面に苔が敷き詰められた落ち着いた空間に、茶室・滴水庵が建っています。この茶室は明治時代の建築で、傳次郎によってこの地に移築されました。 (oniwa.garden)
滴水庵を眺めながら園路を上っていくと、保津峡を挟んだ嵐山と小倉山のパノラマが広がります。嵐山は古くから名所として知られ、国の史跡及び名勝にも指定されていますが、大河内山荘はその醍醐味を味わえる数少ない場所となっています。 (kyoto-ga.jp)このように景色が大きく変わる演出も、傳次郎の発案だったと考えられます。
庭園内には、桜や楓が多く植えられており、春には桜、秋には紅葉が庭園を彩ります。また、庭園内で抹茶とお菓子をいただくこともでき、四季折々の風景を眺めながらの一服は格別です。 (funjapo.com)
大河内山荘庭園は、傳次郎の感性と30年にわたる工夫によって作庭された名園であり、訪れる人々に静寂と美の世界を提供しています。