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目黒駅を降り、目黒川へと続く急な坂道、行人坂を下ると、静寂に包まれた大圓寺が姿を現します。江戸時代初期、1624年に出羽湯殿山の修験僧・大海法印が大日如来を本尊として開いたこの寺は、長い歴史の中で多くの物語を紡いできました。
山門をくぐると、左手に広がる五百羅漢の石仏群が目に飛び込んできます。これらの石仏は、1772年の「行人坂の大火」の犠牲者を供養するために建立されたもので、その数は約520体に及びます。一体一体が異なる表情を持ち、時の流れと共に風化した姿は、訪れる者の心に深い感慨を呼び起こします。
境内には、江戸三大大黒天の一つとして知られる大黒天が祀られています。この大黒天は、徳川家康をモデルにしたとも伝えられ、江戸城の裏鬼門を守護する存在として信仰を集めてきました。また、本堂前には金色に輝く薬師如来像が鎮座しており、体の不調な部分に金箔を貼ることで病気平癒を祈願する風習があります。
さらに、境内には「とろけ地蔵」と呼ばれるお地蔵様が安置されています。この地蔵は、品川沖で漁師の網にかかったもので、当時から損傷が激しかったと伝えられています。その後、行人坂の大火で焼かれ、現在の溶けたような姿となりました。この姿から、「悩みをとろけさせて消す」ご利益があるとされ、多くの参拝者が訪れます。
また、大圓寺は「八百屋お七と吉三」の悲恋物語とも深い縁があります。お七が恋焦がれた寺小姓・吉三は、お七の処刑後、僧となり名を西運と改め、大圓寺下の明王院に入りました。西運はお七の菩提を弔うため、目黒不動尊と浅草観音で長年にわたり念仏行を行い、集まった浄財で行人坂を石畳に直し、目黒川に架かる橋を石橋に造り替えました。この物語は、今も多くの人々の心を打ち、縁結びや恋愛成就のパワースポットとして親しまれています。
大圓寺の境内は、四季折々の自然と歴史が織りなす静寂な空間です。都会の喧騒を離れ、心を落ち着けるひとときを過ごすことができるでしょう。