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仙台市太白区長町南の一角に、時の流れを超えた静寂が息づく場所がある。そこは「地底の森ミュージアム」、2万年前の旧石器時代の息吹を今に伝える、世界でも稀有な空間だ。
館内に足を踏み入れると、地下展示室が広がり、そこには2万年前の焚火の跡や、絶滅したトミザワトウヒなどの針葉樹の森林跡が、発掘されたままの姿で静かに佇んでいる。湿地帯の泥に包まれ、時の流れから守られたこれらの遺構は、当時の人々の営みを生々しく物語っている。
1階の展示室では、発掘された石器や動物の骨などが並び、旧石器時代の狩猟生活や自然環境が解説されている。また、映像や模型を通じて、当時の人々の暮らしや氷河期の風景が再現され、訪れる者の想像力をかき立てる。
館外に出ると、「氷河期の森」と名付けられた野外展示が広がる。アカエゾマツやグイマツなどの針葉樹が植えられ、2万年前の森の風景が再現されている。四季折々の草花や昆虫が息づき、訪れる者に太古の自然の息吹を感じさせる。
この地底の森ミュージアムは、昭和57年(1982年)に地下鉄建設に伴う試掘調査で発見された富沢遺跡を保存・公開するために設立された。2万年前の人類の生活跡と森林跡が現地で保存・公開されているのは、世界でもここだけである。
仙台の喧騒から一歩離れ、地底の森ミュージアムを訪れることで、悠久の時を超えた旅に出ることができる。2万年前の人々の息遣いを感じ、太古の自然に思いを馳せるひとときは、現代の私たちにとって貴重な体験となるだろう。