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長野市の中心部、緩やかな坂道を上ると、歴史と信仰の息吹が感じられる善光寺が姿を現します。創建から約1400年の時を刻むこの寺院は、宗派を超えた庶民の信仰の拠り所として、多くの人々を迎え入れてきました。
参道を進むと、まず目に飛び込んでくるのが高さ約20メートルの山門です。1750年に建立されたこの門は、重厚な佇まいで訪れる者を迎え入れます。門の上部には「善光寺」と書かれた大きな額が掲げられ、その文字の中には五羽の鳩が隠されていると伝えられています。これは、平和と調和の象徴としての鳩が、寺の精神を表しているのでしょう。
山門をくぐり抜けると、目の前に現れるのが国宝に指定された本堂です。1707年に再建されたこの建物は、東日本最大級の木造建築であり、その壮大さに圧倒されます。屋根は総檜皮葺きで、棟はT字型の撞木造りという独特の構造を持ち、堂々たる風格を漂わせています。
本堂の内部に足を踏み入れると、まず目に入るのが「びんずる尊者」の像です。この像は、触れることで自身の病や痛みが癒されると信じられ、多くの参拝者が手を伸ばします。長年の祈りと願いが込められたこの像は、触れられた部分が滑らかに磨かれ、信仰の深さを物語っています。
さらに本堂の地下には、「お戒壇巡り」と呼ばれる真っ暗な回廊があります。手探りで進み、御本尊の真下にある「極楽の錠前」に触れることで、極楽往生が約束されるとされています。この体験は、闇の中で自らの内面と向き合い、信仰の深さを試すものとなっています。
善光寺の御本尊である「一光三尊阿弥陀如来」は、日本最古の仏像とされ、絶対秘仏としてその姿を誰も見ることができません。しかし、7年に一度の御開帳の際には、その分身である「前立本尊」が公開され、多くの参拝者が訪れます。この期間中、本堂前には「回向柱」が立てられ、これに触れることで御本尊と結縁し、功徳を得ることができるとされています。
境内を後にし、門前町を歩けば、石畳の仲見世通りが続きます。ここには、信州名物のおやきや蕎麦、七味唐辛子の老舗「八幡屋礒五郎」など、多彩な店が軒を連ねています。歴史ある街並みと現代の活気が融合したこの通りは、訪れる人々に新たな発見と喜びを提供してくれます。
善光寺は、ただの観光地ではなく、長い歴史と深い信仰、そして人々の生活が息づく場所です。その静寂の中に身を置けば、時を超えた祈りと願いが心に響き、訪れる者すべてに安らぎと感動をもたらしてくれるでしょう。