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岩手県一関市の厳美渓は、悠久の時が創り上げた自然の芸術作品である。栗駒山を源とする磐井川が、長い年月をかけて岩盤を削り出し、約2キロメートルにわたる渓谷美を生み出した。エメラルドグリーンの清流が、奇岩や巨岩、甌穴、深淵、滝といった多彩な景観と調和し、訪れる者の心を奪う。
春には、仙台藩主・伊達政宗公が自ら植えたと伝わる「貞山桜」が咲き誇り、渓谷に華やぎを添える。夏は、涼やかな水音と新緑が心地よく、秋には紅葉が渓谷を彩り、冬は雪化粧した幻想的な風景が広がる。四季折々の表情が、厳美渓を訪れるたびに新たな感動をもたらす。
渓谷を渡る吊り橋「御覧場橋」からは、上流の荒々しい流れと下流の穏やかな深淵という対照的な景観を一望できる。橋を渡るたびに揺れるスリルも、訪れる者の心を躍らせる。
厳美渓の名物として知られる「空飛ぶだんご」は、対岸の茶屋から籠に乗せられ、渓谷を越えて届けられる。このユニークな風習は、訪れる人々に驚きと喜びを与え、旅の思い出として深く刻まれる。
また、渓谷沿いには「サハラガラスパーク」や「一関市博物館」といった文化施設も点在し、自然と文化が融合した魅力的なエリアとなっている。厳美渓は、ただの景勝地にとどまらず、歴史と伝統、そして人々の営みが息づく場所である。
伊達政宗公が「松島と厳美が我が領土の二大景勝地なり」と称賛したこの地は、今もなお多くの人々を魅了し続けている。自然の力が創り出した壮大な景観と、そこに息づく歴史や文化が織りなす厳美渓は、訪れる者に深い感動と癒しをもたらす。