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札幌市厚別区の広大な野幌森林公園の一角に、時を超えた静寂が息づく場所がある。そこは「北海道開拓の村」。明治から昭和初期にかけての北海道の開拓時代を今に伝える、野外博物館である。
村の入口をくぐると、まるで時の流れが逆戻りしたかのような錯覚に陥る。砂利道の両脇には、当時の建築様式を忠実に再現した建物が立ち並び、木造の商店や郵便局、理髪店などが、往時の賑わいを静かに物語っている。これらの建物は、北海道各地から移築・復元されたもので、開拓者たちの息遣いが今も感じられる。
村内は、市街地、農村、漁村、山村の四つのエリアに分かれており、それぞれが北海道の多様な風土と文化を映し出している。市街地エリアでは、旧札幌警察署南一条巡査派出所が目を引く。1885年に建てられたこの建物は、赤レンガの外壁が特徴的で、当時の治安維持の拠点としての役割を果たしていた。内部には、昔の制服を着たお巡りさんが常駐し、訪れる人々との記念撮影に応じている。 (sapporo.travel)
農村エリアに足を踏み入れると、旧菊田家農家住宅が目に入る。1893年頃に建てられたこの住宅は、新潟県からの移住者が建てたもので、開拓者たちの生活の知恵と工夫が随所に見られる。茅葺き屋根と土間のある室内は、当時の農家の暮らしを今に伝えている。 (kaitaku.or.jp)
漁村エリアでは、旧青山家漁家住宅が存在感を放つ。ニシン漁で栄えた時代の名残をとどめるこの建物は、漁師たちの生活と労働の場を再現しており、海の男たちの逞しさと家族の温もりが感じられる。 (gutabi.jp)
山村エリアには、旧本庄鉄工場が佇んでいる。1897年頃に建てられたこの建物は、鍛冶屋として地域の農具や漁具の製造・修理を担っていた。炉の跡や工具類が展示され、職人たちの技と情熱が伝わってくる。 (kaitaku.or.jp)
村内を巡る際には、馬車鉄道や馬そりの体験もおすすめだ。夏季には馬車鉄道が、冬季には馬そりが運行され、開拓時代の移動手段を体感することができる。馬の蹄の音とともに、ゆっくりとした時間の流れを感じながら、村の風景を楽しむことができる。 (sapporo.travel)
また、体験学習棟では、伝統的な遊具作りや手仕事の実演が行われており、訪れる人々に開拓時代の生活文化を身近に感じてもらう工夫がなされている。竹とんぼや水鉄砲作りなど、子どもから大人まで楽しめるプログラムが用意されている。 (smartmagazine.jp)
北海道開拓の村は、単なる展示施設ではなく、訪れる人々が五感で歴史を感じ、学び、楽しむことができる場所である。ここを訪れれば、開拓者たちの苦労と夢、そして北海道の豊かな文化と自然の魅力を深く味わうことができるだろう。