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福島県須賀川市の中心部に佇む市民交流センター「tette」の5階に足を踏み入れると、そこには特撮の神様と称えられる円谷英二監督の世界が広がっています。このミュージアムは、彼の生涯と功績を讃えるだけでなく、訪れる人々に学びと挑戦の大切さを伝え、未来への夢を育む場所となっています。
館内に一歩足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのは「円谷英二クロニクルボックス」。ここでは、1901年に須賀川の麹屋に生まれた一人の少年が、大空への憧れを胸に抱き、やがて「特撮の神様」と称されるまでの68年間の歩みが、7つの時代に分けてパネルや映像で紹介されています。彼の人生の転換点となる出来事が丁寧に描かれ、訪れる者の心を引き込みます。
次に足を運ぶのは「空想アトリエ」。ここでは、円谷監督が子どもたちに伝えたかった「学びの大切さ」を、「生物学」や「機械学」などの架空の学問に見立て、関連する展示物や図書が配されています。例えば、「空想生物学」のコーナーでは、怪獣たちの模型とともに、実際の生物の標本が並び、空想と現実の境界を曖昧にしながら、創造の源泉を探ることができます。
そして、特撮ファンの心を躍らせる「特撮スタジオ」。ここでは、円谷監督が多くの作品を手掛けた東宝撮影所がミニチュアジオラマで再現されています。撮影所の大プールでは、海戦のシーンを撮影する様子が生き生きと再現され、背景には特撮映像の背景画の大家・島倉二千六氏が描いたリアルな空が広がっています。さらに、ジオラマの裏側には、撮影用大道具の倉庫が細部まで作り込まれており、当時の撮影現場の雰囲気を肌で感じることができます。
また、「円谷英二ネットワークウォール」では、当時のエピソードとともに円谷監督の人となりを紐解くインタビュー映像や、関連作品や幅広い人間関係を紹介する検索型コンテンツが配されています。体験型コンテンツの「クラフトかいじゅうだいこうしん」では、パーツの組み合わせにより自分だけのオリジナル怪獣を創作することもでき、子どもから大人まで楽しめる工夫が凝らされています。
このミュージアムは、単なる展示施設にとどまらず、図書館機能も兼ね備えており、展示物と関連する書籍が並び、誰でも自由に手に取ることができます。特撮と直接関係があるものから、創造のヒントとなる多様な分野の書籍まで、幅広い知識と想像力を刺激する空間が広がっています。
須賀川市は、円谷英二監督の故郷として、特撮文化を大切に育んできました。市内には、ウルトラマンシリーズに登場したヒーローや怪獣のモニュメントが点在し、街全体が特撮の世界観に包まれています。また、2013年にはウルトラマンの故郷「M78星雲 光の国」と姉妹都市提携を結び、話題となりました。
このミュージアムを訪れることで、円谷英二監督の情熱と創造力、そして彼が生み出した特撮の魅力を存分に感じることができます。それは、過去から未来へと続く夢と冒険の物語に触れる、特別な体験となるでしょう。