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六義園の北側、緑深い木々の間にひっそりと佇む山陰橋は、まるで時の流れを忘れさせるかのような静寂に包まれています。この小さな土橋は、周囲の樹々の陰に守られ、陽の光が優しく差し込む中、訪れる者に穏やかな安らぎを与えてくれます。
山陰橋の名は、中国の書聖・王羲之の息子が住んでいた地名「山陰」に由来すると伝えられています。この橋を渡ると、藤代峠やつつじ茶屋へと続く小径が広がり、庭園内の散策路としての役割を果たしています。橋の幅は狭く、手すりもないため、混雑時には慎重に歩を進める必要がありますが、その分、自然と一体となった趣を感じることができます。
春には、周囲の木々が新緑に輝き、橋の上から眺める景色はまさに絵画のよう。秋には紅葉が彩りを添え、夕刻には橋のたもとで静かに佇むと、心が洗われるような感覚に包まれます。六義園の中でも特に落ち着いた雰囲気を持つこの場所は、訪れる人々に四季折々の美しさと、心の平穏をもたらしてくれるでしょう。