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六義園の中心に広がる大泉水、その静寂な水面に浮かぶ中の島には、二つの小高い築山が寄り添うように佇んでいます。左手に位置するのが「妹山」、右手にそびえるのが「背山」。古来より、女性を「妹(いも)」、男性を「背(せ)」と称したことから、この二つの山は男女の仲を象徴する存在として庭園に配置されました。
妹山と背山の間には、「玉笹石」と呼ばれる青みがかった石が立っています。これは、藤原信実が詠んだ和歌「いもせ山 中に生たる玉ざゝの 一夜のへだて さもぞ露けき」に由来し、男女の間に生えた玉笹が一夜の隔たりを象徴し、その露が涙を表しているとされています。 (h-nakazato.seesaa.net)
この中の島は、紀州和歌浦の「妹背山」を模して造られたと伝えられています。和歌浦の妹背山は、紀ノ川を挟んで北岸に背山、南岸に妹山があり、夫婦や兄妹の仲を象徴する地として知られています。六義園の中の島も、和歌浦の風景を再現し、男女の和合や子孫繁栄、天地長久の願いが込められています。 (h-nakazato.seesaa.net)
また、妹山と背山の間には、「鶺鴒石(せきれいいし)」と呼ばれる石が配置されています。これは、日本神話に登場する伊奘諾尊(いざなぎのみこと)と伊奘冉尊(いざなみのみこと)が、鶺鴒(せきれい)の動きを見て夫婦の道を学んだという故事にちなみ、夫婦和合の象徴とされています。 (tokyo-park.or.jp)
六義園の妹山・背山は、ただの景観としてだけでなく、和歌や神話、そして人々の願いが込められた特別な場所です。庭園を訪れる際には、これらの歴史や物語に思いを馳せながら、静かに佇む妹山と背山の姿を眺めてみてはいかがでしょうか。