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福岡市の喧騒から一歩足を踏み入れると、そこには異次元の空間が広がっている。白いタイル張りの床と壁、手術室を思わせる無機質な照明、そして窓辺から通りを見下ろす人体模型の視線が、訪れる者を迎え入れる。ここは「サナトリウム」、不思議博物館の分室として2015年に誕生した、療養所をテーマにしたギャラリー喫茶である。 (bu9t-sm.wixsite.com)
店内に足を踏み入れると、白衣を纏ったスタッフ「不思議子ちゃん」が微笑みながら「お大事に」と声をかけてくれる。彼女たちの制服は、第一次世界大戦中のドイツの従軍看護婦をモチーフにしたもので、時代を超えた雰囲気を醸し出している。 (y-ta.net)
カウンター席に腰を下ろすと、目の前には館長である角孝政氏の作品や、実際に使用されていた医療器具、人体模型が並ぶ。これらの展示物は、まるで昭和初期の病院に迷い込んだかのような錯覚を覚えさせる。壁には結核予防のポスターが貼られ、当時の医療の雰囲気を色濃く伝えている。 (sasatto.jp)
メニューを開くと、そこにも独特の世界観が広がっている。「結核ピザトースト」や「ナポリタン」といったフードメニューは、医療器具である膿盆(のうぼん)に盛り付けられ、視覚的なインパクトを与える。デザートの「ホムンクルスゼリー」は、試験管の中で猫が生成されている様子を表現しており、食べる者の想像力を刺激する。 (y-ta.net)
ドリンクメニューも一風変わっている。ビーカーに注がれたバナナシェイク「バリウム」は、見た目のユニークさだけでなく、その味わいも多くの人々を魅了している。また、コーヒーは福岡県筑紫野市二日市の「珈琲Chiba」で焙煎された豆を使用し、香り高い一杯を提供している。 (rurubu.jp)
店内では、定期的にサブカルチャーをテーマにした企画展が開催されており、訪れるたびに新たな発見がある。展示物の撮影は一部禁止されているが、その場にいるだけで十分に不思議な雰囲気を味わうことができる。 (fukuoka-now.com)
この空間は、日常の喧騒から離れ、非日常を体験したい人々にとって、まさに癒しの場となっている。サナトリウムの扉を開けると、そこには時間と空間を超えた不思議な世界が広がっている。