ヒスイ海岸

翡翠の原石が見つかる可能性で知られる海岸

市振海岸に比べると、こちらの砂浜は可愛い小石サイズで、市振海岸の様相こそが特異なのです。   姫川玲子

About

日本海の波が静かに打ち寄せる糸魚川市の海岸線に、石ころが敷き詰められた浜辺が広がっています。この海岸は、地元の人々から「ヒスイ海岸」と呼ばれ、古代からの物語と自然の神秘が交差する場所です。

足元に目をやると、無数の石が波に洗われ、滑らかに磨かれています。その中に、白や淡い緑、時にはラベンダー色に輝く石が混じっています。これらはヒスイの原石であり、糸魚川の大地が生み出した宝物です。約5億年前、地下深くで形成されたヒスイは、長い年月を経て地表に現れ、川の流れに乗ってこの海岸にたどり着きました。 (geo-itoigawa.com)

この地には、古事記にも記された伝説が息づいています。高志の国を治めた才色兼備の女王、奴奈川姫の物語です。出雲の大国主命が遠くから彼女を求めて訪れ、二人は歌を交わし、結ばれたと伝えられています。この伝説は、糸魚川と出雲の深い交流を物語り、ヒスイを介した交易や文化の交流を示唆しています。 (n-story.jp)

海岸を歩くと、波の音とともに、遠い昔の人々の足跡を感じることができます。縄文時代からこの地ではヒスイの加工が行われ、勾玉や大珠といった装飾品が作られていました。これらの工芸品は、権力や信仰の象徴として、日本各地へと広がっていきました。糸魚川は、世界最古のヒスイ文化発祥の地として、その名を刻んでいます。 (geo-itoigawa.com)

海岸沿いには、奴奈川姫の像が静かに佇み、訪れる人々を見守っています。彼女の足元には、幼い建御名方命の姿があり、母子の絆とこの地の歴史を物語っています。像の近くには、勾玉を模したモニュメントや、ヒスイをテーマにしたオブジェが点在し、訪れる人々にこの地の文化と歴史を伝えています。 (geo-itoigawa.com)

波打ち際で石を拾い上げると、その冷たさと滑らかさが手のひらに伝わります。もしかすると、これらの石の中に、遠い昔の人々が大切にしたヒスイが紛れているかもしれません。自然の営みと人々の歴史が交差するこの海岸で、時を超えた物語に思いを馳せることができます。

糸魚川のヒスイ海岸は、ただの石ころの浜辺ではありません。それは、地球の悠久の歴史と人々の営みが織りなす、壮大な物語の舞台なのです。