タウシュベツ川橋梁

北海道上士幌町の「幻の橋」

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北海道の大雪山国立公園内、上士幌町の北部に位置する糠平湖。その湖畔に、時の流れと自然の営みが織りなす幻想的な風景が広がっています。

湖面に浮かび上がるのは、かつて旧国鉄士幌線の一部として1937年に建設されたコンクリート製のアーチ橋。全長130メートル、高さ11メートル、11連のアーチが連なるその姿は、まるで古代ローマの水道橋を彷彿とさせます。

この橋は、1955年に糠平ダムが完成したことで、その役目を終えました。以来、湖の水位の変化により、冬から春にかけては湖面にその全貌を現し、夏から秋にかけては水没するという、まさに「幻の橋」として知られています。

湖面が凍結する厳冬期、氷の上に姿を現す橋は、白銀の世界に浮かぶ遺跡のよう。朝日が昇ると、アーチの影が氷上に長く伸び、静寂の中に歴史の息吹を感じさせます。

春の訪れとともに、雪解け水が湖に流れ込み、水位が上昇。6月頃から橋は徐々に水に沈み始め、10月頃には完全に湖底に消えます。その間、湖面に映るアーチが「めがね橋」として親しまれ、訪れる人々を魅了します。

しかし、長年の風雪と水位変動による浸食で、橋の劣化は進行しています。近年では、橋の一部が崩落するなど、その姿を保つことが難しくなってきています。

この地を訪れる際は、地元のNPO法人「ひがし大雪自然ガイドセンター」が主催するツアーに参加することで、橋の近くまで足を運ぶことができます。

タウシュベツ川橋梁は、自然と歴史が交錯する場所。四季折々に変わるその姿は、訪れるたびに新たな感動を与えてくれます。