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高知県室戸市の海岸沿い、かつて子どもたちの笑い声が響いていた旧椎名小学校が、新たな命を吹き込まれた場所がある。その名も「むろと廃校水族館」。2018年4月、廃校となった校舎が水族館として生まれ変わり、訪れる人々に驚きと懐かしさを提供している。
校舎の外観は、かつての小学校の面影を色濃く残している。青空に映える白い壁、整然と並ぶ窓、そして校庭に立つ時計台。しかし、一歩足を踏み入れると、そこには想像を超える世界が広がっている。
廊下を進むと、手洗い場が目に入る。かつて子どもたちが手を洗っていたこの場所は、今や「タッチプール」として生まれ変わり、ナマコやヒトデ、エビなどが優雅に泳いでいる。訪れた人々は、そっと手を伸ばし、海の生き物たちとの触れ合いを楽しんでいる。
教室に足を踏み入れると、黒板や机、椅子がそのまま残されている。しかし、教壇の前には大きな水槽が設置され、地元の漁師が持ち込んだ魚たちが悠々と泳いでいる。ハリセンボンやウツボ、ゴンズイなど、普段は脇役となる魚たちが主役として展示されており、そのユニークな発想に驚かされる。
さらに進むと、かつての25メートルプールが目の前に広がる。ここでは、ウミガメやサメ、エイなどが悠々と泳いでいる。特にウミガメは、地元の定置網にかかったものを保護し、ここで大切に育てられている。時折、成長したウミガメを地元の子どもたちとともに海へ放流するイベントも行われており、地域との深い絆を感じさせる。
3階に上がると、理科室や図書室がそのままの形で残されている。理科室には、ミンククジラの骨格標本や深海魚の標本が展示され、訪れる人々に海の神秘を伝えている。図書室には、海に関する書籍や資料が並び、学びの場としての役割も果たしている。
この水族館の魅力は、単なる展示にとどまらない。かつての学校の雰囲気をそのままに残しつつ、新たな命を吹き込むことで、訪れる人々に懐かしさと新鮮さを同時に提供している。また、地元の漁師や住民との連携により、地域全体でこの場所を支えている。
「むろと廃校水族館」は、過去と現在、そして未来をつなぐ場所として、多くの人々に愛され続けている。ここを訪れれば、かつての学校の思い出とともに、海の生き物たちの息吹を感じることができるだろう。