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京都の東山、松原通りを歩くと、ひっそりと佇む一軒の飴屋が目に入る。その名も「みなとや幽霊子育飴本舗」。450年以上の歴史を持つこの店は、琥珀色に輝く飴と、母の深い愛情を物語る伝説で知られている。
時は慶長四年(1599年)。六道の辻にあるこの飴屋に、毎夜、青白い顔の女性が訪れ、一文銭で飴を買い求めていた。店主が不思議に思い、ある夜その女性の後を追うと、彼女は墓地で姿を消した。そこから赤子の泣き声が聞こえ、墓を掘り起こすと、亡くなった母親とともに生まれたばかりの赤子が見つかった。母親は死後も我が子を育てるため、幽霊となって飴を買いに来ていたのだ。この赤子は後に高名な僧となり、68歳で生涯を閉じたという。 (kosodateame.com)
店内に足を踏み入れると、昔ながらの製法で作られた飴が並ぶ。麦芽糖とザラメ糖のみを使用し、型に流し込んで固め、金槌で砕いた飴は、素朴で懐かしい味わいが広がる。口に含むと、優しい甘さが広がり、後味はすっきりとしている。この飴は「出世飴」とも呼ばれ、食べると出世する縁起物としても親しまれている。 (fujingaho.jp)
店の奥には、伝説の女性が飴を買う際に使ったとされる銭箱が今も大切に保管されている。その木の箱は、時を超えて母の愛情と店の歴史を物語っている。また、店主の温かい笑顔と丁寧な接客が、訪れる人々の心を和ませる。
毎年8月7日から10日にかけて行われる「六道まいり」の期間中、この界隈は多くの参詣者で賑わう。その際、幽霊子育飴を求める人々が後を絶たない。この飴は、母の愛情と命の尊さを伝える象徴として、今も多くの人々に愛され続けている。 (fujingaho.jp)
京都の風情漂う東山の一角で、時を超えて受け継がれる母の愛の物語と、素朴な甘さの飴が、訪れる人々の心を温かく包み込んでいる。