あぶくま洞

福島県田村市の著名な鍾乳洞

これは滝根御殿の写真です。   t Y

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福島県田村市の深奥、仙台平と呼ばれるカルスト台地の懐に、悠久の時が創り上げた神秘の空間が広がっています。それが「あぶくま洞」、約8000万年もの歳月をかけて形成された鍾乳洞です。洞内は年間を通じて約15度の涼しさを保ち、夏の暑さを忘れさせてくれる別世界が広がっています。

1969年、石灰岩の採掘中に偶然発見されたこの洞窟は、全長約600メートルの公開部分を持ち、鍾乳石の種類と数の多さでは東洋一とも称されています。洞内に足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのは「滝根御殿」と名付けられた高さ29メートルの大ホール。天井から垂れ下がる無数の鍾乳石が、まるで自然が創り出した壮麗なシャンデリアのように輝き、訪れる者を圧倒します。

さらに進むと、「竜宮殿」と呼ばれる高さ13メートルのホールが現れます。ここには、きのこの形をした「きのこ岩」や、樹氷のような輝きを放つ巨大な石柱「樹氷」、そしてクリスマスツリーを思わせる「クリスマスツリー」など、自然が生み出した多彩な造形美が広がっています。

洞内の最深部には、「月の世界」と名付けられた幻想的な空間が待っています。ここでは、舞台演出用の調光システムが導入され、暗闇から朝日が昇り、夕日となって沈むまでの光のショーが繰り広げられます。自然と人工の光が織りなすこの演出は、訪れる者の心を深く揺さぶります。

あぶくま洞の周辺には、石灰岩の採掘跡である高さ140メートルの白い岩壁がそびえ立ち、かつての採石場の名残を今に伝えています。また、洞内で貯蔵熟成されたワイン「北醇」や、地元特産のエゴマを使った「じゅうねん味噌」など、訪れた記念に手に入れたい逸品も揃っています。

この地には、坂上田村麻呂が奥州征伐の際に出会った大熊にちなんで名付けられた「逢隈川」の伝説や、豪族大多鬼丸が財宝を隠したとされる「鬼穴」の伝説など、歴史と神話が息づいています。あぶくま洞を訪れることで、これらの物語に思いを馳せ、自然と歴史が織りなす深い魅力を感じることができるでしょう。

地底に広がるこの神秘的な世界は、自然の偉大さと時の流れを感じさせてくれます。あぶくま洞を訪れ、その幻想的な美しさに触れることで、日常を忘れ、心の奥深くに響く感動を味わうことができるでしょう。