nokishita711 liquid cuisine

京都市下京区のバー

About

京都の静かな路地裏、下京区の一角にひっそりと佇む「nokishita711」。その扉を開けると、まるで異世界への入口をくぐったかのような感覚に包まれる。店内は、店主関根智生氏が各地で集めた骨董品や古道具で彩られ、時代を超えた美意識が漂う空間となっている。

この小さなバーは、わずか4席のみの親密な空間。完全予約制で、訪れる者は皆、関根氏が創り出す「液体料理」という独自のカクテル体験に身を委ねる。彼の哲学は、肉、魚、虫、野菜、果実、草木といったあらゆる素材の味わいを液体として抽出し、カクテルとして提供することにある。これは、従来のカクテルの概念を超え、素材そのものの味わいを最大限に引き出す試みである。 (nokishita.net)

例えば、ある夜のメニューには、白味噌、昆布、野菜の皮、山葵、杉の葉、白ワインの煮詰め、ジンを組み合わせた温かいカクテルが登場する。その一口は、まるで上品な味噌汁を思わせる深い味わいで、寒い夜に心と体を温めてくれる。また、鹿肉、牛蒡、焙じ茶、苺、黒麹、赤ワインの煮詰め、ジンを用いたカクテルは、野趣あふれる風味と甘酸っぱさが絶妙に調和し、まるで森の中で味わう一杯のようだ。 (firreflly.co)

各カクテルには、それぞれの素材を活かした一口サイズのスナックが添えられる。例えば、鹿肉と牛蒡のタコスや、鯖とスパイスを使ったヌガーグラッセなど、カクテルとスナックが一体となって、五感を刺激する体験を提供する。これらの組み合わせは、関根氏が素材を余すことなく活用し、無駄を出さないという哲学に基づいている。 (firreflly.co)

関根氏は、かつて料理人としての経験を持ち、その知識と技術をカクテル作りに活かしている。彼の探求心は、昆虫を使ったカクテルにも及び、蜂の幼虫や巨大な水生昆虫など、一般的には考えられない素材を取り入れることで、新たな味わいの世界を切り開いている。彼は、「各昆虫には異なる風味があり、それぞれが独自の味わいを持っている」と語る。 (atlasobscura.com)

コースの締めくくりには、関根氏自らが淹れる中国茶の茶会が待っている。これは、客とホストが同じ飲み物を共有することで、心の距離を縮めるという彼の思いが込められている。この茶会は、まるで友人の家で開かれる小さなパーティーのような温かさを感じさせる。 (atlasobscura.com)

「nokishita711」は、京都の伝統と革新が交差する場所であり、訪れる者に新たな味覚の冒険を提供する。ここでの体験は、単なる飲食を超え、五感と心を揺さぶる芸術的な旅となるだろう。